
結論:大半の経営者は「個人名義」が有利。ただし条件次第で逆転する
個人名義なら住宅ローン控除(最大年35万円)が使え、売却益への課税も優遇される。法人名義は経費化できる反面、出口の課税が重く、メリットが打ち消されるケースが多い。

そもそも法人名義にすると何が経費になるのか
法人で購入すると、建物の減価償却費・固定資産税・火災保険料・修繕費などを損金(法人の経費)に算入できる。節税効果が出るように見えるが、話はここで終わらない。
実務でよく相談を受けるのは「法人の利益が1,000万円を超えていて、何か使えないか」という40代の中小企業オーナーのケースだ。確かに減価償却で年間数十万円の損金は作れる。しかし後述する出口コストを試算すると、ほぼ全員が「個人の方が手残りが多かった」という結論になる。

個人名義と法人名義の税金を表で比較する
| 比較項目 | 個人名義 | 法人名義 |
|---|---|---|
| 住宅ローン控除 | 最大35万円/年(新築)※借入残高の0.7% | 使えない |
| 減価償却・経費 | 不可(居住用) | 可能(損金算入) |
| 売却益の税率 | 長期譲渡20.315%(5年超) | 法人税率約30〜34% |
| 3,000万円特別控除 | 使える(居住用) | 使えない |
| 相続時の評価 | 路線価等で圧縮される | 株価に反映・圧縮効果薄 |
| 役員社宅スキーム | 別途検討余地あり | 家賃の一部を個人負担 |
住宅ローン控除は「自己の居住用」が条件のため、法人名義では原則適用外になる(国税庁)。
売却時の課税差が最大の落とし穴
個人で5年超保有した居住用財産を売ると、3,000万円特別控除後に残った譲渡益へ20.315%の税率が適用される。一方、法人が売ると売却益はそのまま法人所得に合算され、法人税等の実効税率(中小企業でも約30〜34%)がかかる。
仮に3,000万円の売却益が出た場合、個人なら控除後の課税ゼロになり得るが、法人なら約900〜1,000万円の税負担が生まれる。経費で節約した額が一度の売却で吹き飛ぶ計算だ。
「役員社宅」という第三の選択肢
法人名義で購入し、役員が賃料相当額の一部を会社に支払う「役員社宅」スキームという方法もある。この場合、住宅ローン控除は使えないが、残りの家賃を会社経費にでき、所得の分散効果がある。賃料の計算は国税庁の通達(法人税基本通達9-4-1)に基づく。ただし計算が複雑で、税理士との連携が必須だ。
決算期前に確認すべき3つのポイント
- ローン控除の有無:個人名義で住宅ローン控除を使うと10年間で数百万円の還付になる。これを捨ててまで法人経費化するメリットがあるか試算する。
- 保有期間と出口戦略:10年以内に売却・建替えを想定するなら、出口課税の差がさらに重要になる。
- 法人の実効税率:赤字法人や税率の低いフェーズなら経費化メリットが薄い。黒字が続く高税率フェーズのみ検討に値する。
よくある質問
Q. 法人で購入した住宅を後から個人に移せますか? A. 可能ですが、法人から個人への譲渡は時価での売買が原則です。みなし譲渡課税や不動産取得税が発生するため、安易な移転はコスト増になります。
Q. 住宅ローン控除の「最大35万円」はどんな条件ですか? A. 2024〜2025年入居・新築住宅の場合、借入残高の0.7%を年末残高に乗じた額が上限です。子育て世帯等の認定住宅では上限借入残高5,000万円、控除額最大35万円になります(国税庁タックスアンサー)。
Q. 役員社宅にすると住宅ローンは使えますか? A. 法人名義のローンになるため、個人向け住宅ローン(フラット35等)は利用できません。法人向けの事業性融資になり、金利・審査条件が異なります。
Q. 税理士とFPどちらに相談すべきですか? A. 税務処理(確定申告・法人決算)は税理士、購入前のトータルシミュレーション(ローン・保険・資産設計との統合)はFPが得意領域です。両者を連携させるのが最もコスト効率が高いです。


