
結論:買い替えで両方使おうとすると、住宅ローン控除がまるごと消える
売却の3000万円特別控除(居住用財産を譲渡した場合の特別控除)と、新居の住宅ローン控除は同じ年に適用すると、住宅ローン控除側が使えなくなります。どちらか一方しか恩恵を受けられないのに、この制度の「非両立ルール」を知らずに進める買い替え層が後を絶ちません。

なぜ併用できないのか?制度の構造を1分で理解する
国税庁のタックスアンサーに明記されています。住宅ローン控除(租税特別措置法41条)は、適用を受ける年の前後2年(合計5年間)に、居住用財産の3000万円特別控除や買い替え特例などを使っていないことが要件の一つです。
- 売却した年:3000万円特別控除を使う
- その前後2年以内に新居を取得してローン控除申請 → ローン控除は全額アウト(その年だけでなく適用全期間が失われる)
「前後2年」というのが曲者で、売却を先にしても後にしても、2年以内に購入・入居が重なれば控除が消えます。

どちらを選ぶと得か?金額で比較する
| 比較軸 | 3000万円特別控除 | 住宅ローン控除 |
|---|---|---|
| 対象 | 売却益(譲渡所得)がある人 | 新居で年末ローン残高がある人 |
| 最大メリット | 売却益×税率(最大約20%)が非課税 | 年末残高×0.7%×最長13年 |
| 条件 | 居住用財産の売却、所有期間問わず | 新居取得・入居・10年以上ローン 等 |
| 選ぶ目安 | 売却益が大きい場合 | 売却益がほぼゼロまたは損失の場合 |
売却益が500万円あれば、3000万円特別控除で約100万円の節税になります(所得税・住民税合計約20%)。一方、住宅ローン控除は借入4000万円・13年満期で最大364万円(0.7%×13年)が上限です。売却益の大きさと新規借入額を試算してから判断してください。
相談現場で起きた「申告後に気づいた」ケース
30代後半・共働きのご夫婦が、都内のマンションを売却して郊外に戸建てを購入しました。売却益は約400万円。仲介担当から「3000万円控除があるから確定申告して」とアドバイスされ申告。翌年の住宅ローン控除の年末調整で控除が適用されていないことに気づき、相談に来られました。
売却益が400万円なら税負担は約80万円。住宅ローン控除を13年フルに使えば総額240万円超になる可能性がありました。売却益を正確に試算してから選択していれば、住宅ローン控除を選んだほうが160万円以上有利だったケースです。修正申告で3000万円控除を取り下げることも検討しましたが、時期的に間に合わず、取り返しがつきませんでした。
損をしないための3ステップ
- 売却益をまず正確に試算する(取得費・譲渡費用を確認)
- 住宅ローン控除の総額と比較する(借入額・金利・期間で計算)
- どちらか有利な方を選んでから、売却・購入のスケジュールを組む
「とりあえず両方申請すれば得」は完全に誤りです。申告した瞬間に選択が確定するので、申告前に必ずFPか税理士に相談してください。
よくある質問
Q. 売却した年に損失が出た場合も、住宅ローン控除と非両立になりますか? A. 3000万円特別控除を「使わなければ」問題ありません。損失の場合は控除を適用する理由がないため、ローン控除と同時に「譲渡損失の繰越控除」が使えるケースがあります。
Q. 夫婦共有名義で売却した場合、3000万円控除は二人分使えますか? A. それぞれが居住用財産として要件を満たせば、一人最大3000万円×2名義で合計6000万円まで控除できます。ただし二人ともローン控除が使えなくなる点は同様です。
Q. 「前後2年」の起算はいつからですか? A. 売却した年の前2年・後2年の合計5年間です。たとえば2024年に売却なら、2022〜2026年の間に新居取得・入居があるとローン控除が失われます。
Q. 買い替え特例(特定の居住用財産の買換え特例)も同様ですか? A. はい。買い替え特例も住宅ローン控除との併用はできません。同じく5年ルールが適用されます。


