
iDeCoより先にNISAを始める? それ、順番が逆です
「とりあえずNISAを開設しました」という相談者が後を絶ちません。 気持ちはわかります。NISAのほうが話題になっているし、いつでも引き出せて安心感がある。 でも課税所得がある会社員のおひとりさまに限っていえば、NISAより先にiDeCoを埋めないと、無駄に税金を払い続けることになります。 これ、知っているようで見落としている人が多い。

iDeCoとNISAの違い──おひとりさまに刺さる一点
iDeCoとNISAの最大の違いは「節税がいつ効くか」です。
| 項目 | iDeCo | NISA(つみたて枠) |
|---|---|---|
| 所得控除 | あり(掛金全額) | なし |
| 運用益非課税 | あり | あり |
| 引き出し時期 | 原則60歳以降 | いつでも可 |
| 年間上限(会社員) | 最大27.6万円 | 120万円 |
| 緊急時の引き出し | 不可 | 可 |
NISAは運用益に税金がかからない。それは正しい。 ただし掛金を積む段階では1円も節税になりません。 iDeCoは積む瞬間から所得控除が効き、年収400万円の会社員なら月1万円の掛金で年間約2万円の税負担が減ります。 「将来のリターン」ではなく「今年の税金」が手元に残る、これがiDeCoの本質的な強みです。

おひとりさまが「先にiDeCo」を徹底すべき、もう一つの理由
パートナーがいる世帯は、一方が急病になっても、もう一方の収入が緩衝材になります。 おひとりさまにはその緩衝材がない。収入も、老後の介護コストも、すべて一人で完結します。 だからこそ「使える税優遇を一つも取りこぼさない」姿勢が、会社員世帯の何倍も大切になるのです。
必要な老後資金の目安
総務省の家計調査では単身65歳以上の月の生活費は約15万円。 国民年金の受取額が月10〜11万円とすると、毎月4〜5万円の不足が20〜25年続く計算になります。
| シナリオ | 毎月不足額 | 20年分 | 25年分 |
|---|---|---|---|
| 最低ライン | 4万円 | 960万円 | 1,200万円 |
| 医療・介護込み | 7〜8万円 | 1,680万円 | 2,400万円 |
介護費用の平均は約500〜600万円(生命保険文化センター調査参考値)。 これを合算すると2,000〜2,500万円が現実的な備えの水準です。 ただしこの数字は「余裕を持った目安」であり、年金受取額や住居費によって個人差があります。 まずねんきんネットで自分の受取見込み額を確認するところから始めてください。
相談現場でリアルに起きた話
先日、38歳・会社員の女性が来られました。 毎月3万円を「なんとなく定期預金」に置いていましたが、iDeCoに月2万円・NISAに月1万円に振り替えるだけで、20年後の手取りが推計120万円以上変わる試算になりました。 「NISA口座は持っているのに、なぜか損をしていた」というのが正確な表現です。 積立先を変えただけで、生活は何も変えていません。
iDeCoを先に始めるときの三つの注意点
① 生活防衛資金(生活費6か月分)はiDeCoの外に先置きする 60歳まで引き出せない構造なので、急な出費にiDeCoで対応しようとしても不可能です。 緊急時の現金はNISA口座の外、普通預金か短期債券で確保してください。
② 転職・退職時の手続きを放置しない 放置するとコストがかさみ、せっかくの節税効果が薄れます。 転職が決まった段階で速やかに移管手続きを行うことが鉄則です。
③ 受取方法を退職5〜10年前に試算する 一括受取(退職所得控除)か年金受取(公的年金等控除)かによって税負担が変わります。 勤務先の退職金と重なると課税が増えるケースがあるため、早めに確認してください。
よくある質問
Q. 自営業・フリーランスの場合、iDeCoの上限額は違いますか?
A. はい。国民年金第1号被保険者(自営業・フリーランス等)の上限は月6.8万円(年81.6万円)で、会社員より大幅に高く設定されています。公的年金が少ない分、iDeCoを厚く積める余地があります。
Q. NISAとiDeCoは同時に始めてもよいですか?
A. 同時でも問題ありません。ただし家計の余力が限られる場合は、先にiDeCoで節税メリットを確定させ、残額をNISAに回す順番が効率的です。
Q. iDeCoの受取方法で税負担はどう変わりますか?
A. 一括受取(退職所得扱い)は退職所得控除、年金受取(雑所得扱い)は公的年金等控除が適用されます。退職金との兼ね合いで有利な方が変わるため、退職5〜10年前に試算するのが理想です。
Q. 老後の「2,500万円」は全員に必要ですか?
A. 必須ではありません。受け取れる年金額・住居費・健康状態によって必要額は変わります。まずねんきんネットで自分の年金見込み額を把握し、そこから逆算して積立額を決めてください。

