
結論:「年収の◯倍」は金融機関の審査基準であって、あなたの家計の安全基準ではない
「年収の5〜7倍まで借りられる」という話、どこかで聞いたことがありますよね。でも正直に言います。あれは借入可能額の目安であって、生活が苦しくならない額の目安ではありません。
金融機関が審査で使う「返済負担率(年収に占める年間返済額の割合)」は、フラット35では年収400万円以上で35%以下が基準です。年収600万円なら年間210万円、月17.5万円まで借りられる計算になります。でも手取り月35万円の共働き世帯が月17.5万円をローンに使ったら、生活費は17.5万円。子育て中の家庭では現実的ではないですよね。

「返済比率」とは何か、まずここを押さえる
返済負担率(返済比率)=年間返済額 ÷ 額面年収 × 100。金融機関の審査は「額面年収」で計算する。
問題はここです。手取り収入は額面の75〜80%程度しかありません(社会保険料・所得税・住民税を引いた後の実額)。審査基準を満たしていても、実際の生活費の出どころである手取りベースで返済比率を見ると、数字がまるで変わります。
| 年収600万円の世帯(手取り約460万円) | 金融機関審査ベース | 手取りベース |
|---|---|---|
| 年間返済額(月15万円) | 返済比率 30% | 返済比率 39% |
| 年間返済額(月12万円) | 返済比率 24% | 返済比率 31% |
| 年間返済額(月9万円) | 返済比率 18% | 返済比率 23% |
「審査が通った=安全」ではないことが、この表を見るだけで分かります。

手取りから見た「安全な返済比率」はどこか
手取りベースで25%以内が、家計の安全ラインです。 これは固定費(食費・光熱費・保険・教育費)を確保した上で、貯蓄も継続できる水準を実務の相談ベースで確認してきた目安です。
東京都内在住の30代共働き夫婦(未就学児1人)の相談で、こんなケースがありました。世帯年収800万円で「7,000万円の物件を検討中」と来られた方です。審査上の返済比率は約31%でクリア。でも手取りベースで試算すると約40%近くになり、保育園・習い事・車のローンを加えると毎月2〜3万円の赤字が出るシミュレーションになりました。物件の魅力は本物でしたが、借入額を5,800万円に下げることで手取り返済比率を26%に抑え、貯蓄も月3万円確保できる着地になりました。
「年収の◯倍」より使える、3ステップの自己診断
ステップ1:手取り月収を確認する。 直近の給与明細の「差引支給額」を確認してください。ボーナスは変動するので月給ベースで計算するのが安全です。
ステップ2:毎月の固定費を書き出す。 食費・光熱費・通信費・保険・車両費・教育費の合計を出す。一般的な子育て世帯では月20〜25万円程度になることが多いです。
ステップ3:返済に使える額を逆算する。 手取り月収 − 固定費 − 貯蓄目標額(月3〜5万円は最低確保)= 返済の上限額。この数字を先に決めてから、借入額を逆算するのが正しい順序です。
よくある質問
Q. フラット35の審査基準「返済負担率35%以下」はどこで確認できますか? A. 住宅金融支援機構の公式サイトに記載されています。年収400万円未満は30%以下、400万円以上は35%以下が基準です。
Q. 変動金利で借りる場合、返済比率の考え方は変わりますか? A. 変わります。変動金利は将来の金利上昇リスクがあるため、現在の返済比率に加え、金利が1〜2%上昇したケースでも手取りベース25%以内に収まるかを確認することをお勧めします。
Q. 共働きですが、産休・育休で収入が一時的に下がる場合はどう考えればよいですか? A. 育休中の手取りをベースにシミュレーションするのが最も安全です。育児休業給付金(賃金日額の67%相当)を収入として計算し、その水準でも家計が回るかを確認してください。
Q. 「年収の5倍なら安全」という記事もよく見ますが、信頼できますか? A. 金利水準・家族構成・固定費の構造が違えば、5倍でも苦しくなります。倍率の目安は出発点にはなりますが、必ず手取りと実際の生活費に落とし込んで判断してください。倍率だけで決めるのはリスクがあります。


