
「近所が3,800万円で出てる、うちも同じくらいでしょ」——その読み方が計画を壊す
ポータルサイトで周辺物件を調べて、売却価格の目星をつけた。その行為自体は悪くない。問題は、そこに並んでいるのが「売れた価格」ではなく「売りたい価格」だということに、多くの人が気づかないまま住み替え計画を立ててしまうことだ。

売り出し価格と成約価格、何が違う?
売り出し価格=売主の希望額。成約価格=市場が認めた本当の値段。 この2つは構造的にズレるようにできている。
理由は3つある。
- ①最初から値引き分を乗せている 不動産会社も売主も交渉余地を見込んで高めに設定するのが慣行だ。
- ②売れ残れば値下げが避けられない 問い合わせが止まれば数週間〜数ヶ月で価格を落とすことになる。
- ③長期化すると買主の指値が通りやすくなる 「なぜまだ売れていないのか」と思われた時点で、交渉の主導権は買主側に移る。
こうして「最初につけた値段」と「最終的に売れた値段」の間に、数百万円単位の差が生まれる。

千葉エリアの実態:乖離はどのくらいか?
国土交通省「不動産取引価格情報」とレインズの市場動向データをもとにすると、傾向は下表のとおりだ。
| 物件種別 | 売り出し価格との乖離傾向 | 乖離が広がりやすい条件 |
|---|---|---|
| マンション | 数〜10%程度下振れ | 築古・駅徒歩10分超 |
| 戸建て | 5〜15%程度下振れ | 旗竿地・土地形状難あり |
| 土地 | 交渉余地が特に大きい | 接道条件・用途地域の制限 |
※個別物件・時期・エリアにより異なる。
千葉エリアは東京都心と比べて流動性(売買の回転率)が低いゾーンが多い。需要が薄いエリアほど、売れ残りが長期化し、乖離が拡大するという構造がある。郊外の大型団地、駅徒歩15分超の戸建て、旗竿地などはとりわけ注意が必要だ。
「400万円のズレ」が住み替え計画を狂わせた実例
先日、千葉市内の40代夫婦から相談を受けた。築15年の戸建てを売却して住み替える計画で、「ポータルサイトで近隣を見たら3,800万円の物件が出ていたので、同じくらいで売れると思っていた」とのことだった。
国土交通省の取引価格情報で同エリアの直近成約データを確認すると、類似物件の成約価格は3,200〜3,400万円台が中心だった。
「見た価格」と「売れる価格」の差が400万円以上。これは単なる誤差ではない。住み替えローンの借入額、手元に残る資金、次の購入予算——計画の全行程が狂う数字だ。
相場を正しく読むデータ、使うべき順番
ポータルサイトを「相場の参考」にするのをやめて、以下の順番でデータを引くことを習慣にしてほしい。
- レインズ成約事例(不動産会社経由で確認。実際に売れた価格が見られる唯一に近いデータ)
- 国土交通省「不動産取引価格情報」(誰でも無料で検索できる実取引ベースのデータ)
- 土地総合情報システム(国交省運営。地価公示・取引価格を地図上で確認できる)
ポータルサイトの掲載価格は「成約が確認されていない値段」だ。ウォッチする意味がないとは言わないが、相場の根拠に使うべきデータは成約価格のみと覚えておいてほしい。
売却前に必ずやる3つのアクション
- 実取引データを自分でも確認する(国交省の取引価格情報は誰でも検索できる)
- 複数社の査定を比較する(1社の高値査定をそのまま資金計画に使わない)
- 売り出しから成約までの期間も必ず聞く(長期売れ残りは値下げリスクの先行指標になる)
売り出し価格はスタートラインに過ぎない。成約価格こそが市場の本音だ。千葉エリアで売却を検討するなら、公開統計の実取引データを出発点にして相場を組み立てることが、計画を崩さないための最初の一手になる。
よくある質問
Q. 売り出し価格より高く売れることはありますか?
A. あります。ただし希少性の高いエリア・物件に限られます。千葉エリアで一般的な住宅の場合は売り出し価格以下での成約が多数派であり、「値上がり前提」の計画は危険です。
Q. レインズの成約データは自分で見られますか?
A. 一般向けには「レインズマーケットインフォメーション」が公開されています。ただし個別物件の詳細情報は不動産会社経由での確認が確実です。
Q. 査定価格と成約価格も違うのですか?
A. 違うことがほとんどです。査定価格は「売れそうな価格の見込み」であり、実際の成約は市場の反応次第で変わります。査定価格をそのまま資金計画に組み込むのはリスクがあります。
Q. 千葉エリアで相場が特に読みにくいのはどんな物件ですか?
A. 郊外の大型団地・旗竿地・駅徒歩15分超の戸建てなどは流動性が低く、売り出しから成約まで長期化しやすいため乖離が大きくなる傾向があります。長期化すればするほど買主の指値が通りやすくなり、当初の計画からさらにずれていきます。

