
「3,200万円まで借りられます」──その言葉を信じると10年後に詰む
銀行の審査を通過した瞬間、多くの人は「これだけ借りられるなら大丈夫だ」と思う。 でもその数字は、銀行が損をしない上限であって、あなたの家計が壊れない上限ではない。 年収400万円の子育て世帯に本当に必要なのは、「借りられる額」ではなく「返し続けられる額」の逆算だ。

借入上限は3,000万円が「家計が壊れないライン」? 答えはYes
銀行の融資上限は年収の約7〜8倍、年収400万円なら最大3,200万円前後が目安だ。 ただし返済比率(年収に占める年間返済額の割合)が30〜35%を超えると、毎月の家計はギリギリになりやすい。 手取り月収を約29万円として借入額別に並べると、差は歴然だ。
| 借入額 | 月返済額の目安 | 手取り月収比 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 2,500万円 | 約7.5万円 | 約26% | ◎ 余裕あり |
| 3,000万円 | 約9.0万円 | 約31% | ○ ギリギリ許容 |
| 3,500万円 | 約10.5万円 | 約36% | △ 要注意 |
| 4,000万円 | 約12.0万円 | 約41% | × 家計破綻リスク |
※金利1.8%・35年返済・元利均等。手取り月収は年収400万円の場合で約29万円と仮定。
月返済比30%以内、つまり3,000万円前後が現実的な上限だ。 3,500万円まで許容できるかどうかは、教育費・修繕費・老後資金と照らし合わせた上で判断する。

子育て世帯が見落とす「隠れコスト」が家計を壊す
物件価格だけ見て「いける」と判断するのが、最も多いミスだ。 購入後に確実に発生するコストを先に把握しておこう。
- 諸費用:物件価格の3〜7%(仲介手数料・登記費用・火災保険など)。3,000万円の物件なら90〜210万円が別途かかる。
- 固定資産税:年10〜20万円が目安。新築軽減(住宅部分)は3年間のみ。
- 修繕費:マンションは月1〜2万円の積立金。戸建ても10〜15年ごとに外壁・屋根で100万円超。
- 教育費ピーク:子どもが中学〜高校の時期、家計支出は月数万円単位で跳ね上がる。
先日ご相談に来られた30代のご夫婦は、当初4,000万円の物件を検討されていた。 キャッシュフロー表を一緒に作ったところ、子どもが中学生になる10年後に毎月5万円超の赤字が判明した。 3,200万円の物件に変更するだけで、老後資金の積み立てを並行できる家計に変わった。 物件価格を200〜400万円下げるだけで、10年後の家計はまったく別物になる。
住宅ローン控除は「頭金をどうするか」の答えを変える
住宅ローン控除は年末ローン残高の0.7%が最大13年間、所得税・住民税から直接引かれる制度だ。 年収400万円世帯でも年間10〜15万円の節税になるケースが多い(国税庁「住宅借入金等特別控除」参照)。
この控除額を加味すると、「頭金を厚くして借入を減らす」より「手元資金を残す」方が有利になる場面がある。 生活費6カ月分+諸費用分の現金を手元に置いた上で、残りを頭金に回す順番が正しい。 「頭金ゼロが不安」という感覚は正直だが、流動性の低い頭金より手元現金の方が家計リスクに強い。
まとめ:年収400万・子育て世帯の「家の上限」4つの数字
- 借入上限:月返済比30%以内=3,000万〜3,500万円が現実的なレンジ
- 諸費用:100〜200万円を現金で別途確保する(ローンに組み込まない方が安全)
- 教育費・修繕費:10〜15年先まで家計を時系列で確認してから物件を決める
- 住宅ローン控除:年10〜15万円の節税を加味して頭金と手元資金のバランスを決める
「借りられる額」から家を選ぶと、10年後に後悔する。 「返し続けられる額」から逆算して家を選ぶと、買った後も豊かでいられる。
よくある質問
Q. 共働きで収入合算すれば借入上限は上がりますか?
A. 上がります。ただし、どちらかが育休・転職・離職した場合のリスクも同時に上がります。ペアローンや収入合算を使う場合も、「片方の収入だけで返せる額」を安全ラインとして必ず把握してください。二馬力前提の借入は、一馬力になった瞬間に詰みます。
Q. 頭金はいくら用意すべきですか?
A. 最低でも諸費用分(物件価格の3〜7%)は現金で用意するのが原則です。それ以上の頭金を入れるかどうかは、手元流動性(生活費6カ月分以上)を確保した後で判断してください。頭金より現金の方が緊急時に役立ちます。
Q. 変動金利と固定金利、どちらを選ぶべきですか?
A. 年収400万円の子育て世帯は家計の余白が薄いため、金利上昇リスクを避けたいなら固定または固定期間選択型が安心です。変動金利が有利になりやすいのは、繰り上げ返済の余力が月3〜5万円以上ある世帯です。余白がない状態で変動を選ぶのは、コストを取りにいってリスクを買う行為です。
Q. 住宅ローン控除の主な適用条件は何ですか?
A. 床面積50㎡以上・本人が居住・ローン期間10年以上などが主な要件です。新築と中古で控除限度額・対象期間が異なります。詳細は国税庁「住宅借入金等特別控除」のページで確認してください。

