
「ペアローンにしておけばよかった」は本当か?
ペアローンを勧めるとき、不動産営業マンはこう言う。 「お二人の収入を合わせれば、もっといい物件が買えますよ」。 たしかに借入額は増える。ただし、そのローンは離婚した瞬間に牙を剥く。
相談現場でペアローンの「離婚後」を見続けてきた経験からはっきり言う。 ペアローンは、夫婦関係が永遠に続く前提で設計された商品だ。

ペアローンの構造:まず「二本立て」を頭に叩き込む
ペアローンとは、夫婦がそれぞれ別々の主債務者として契約する仕組みだ。 (例:夫2,500万円・妻1,500万円、計4,000万円を二本のローンで借りる)
お互いが相手の連帯保証人にもなるため、 一方が払えなくなれば、もう一方に全額請求が来る。 この「二本立て+互いに保証」という構造が、離婚後に三重苦を生む。

リスク① 「住まない家」のローンを死ぬまで払う羽目になる
問い:離婚して家を出れば、ローンも終わり?
答え:契約は1ミリも変わらない。退去翌月も請求書は届く。
離婚届を出しても、金融機関との契約は消えない。 先日相談に来た30代の男性は、家を出た後も月8万円の返済が続き、 新居の家賃9万円と合わせて月17万円の住居費を払い続けていた。 給与は手取り28万円。残り11万円で生活費・保険・貯蓄をやりくりする計算だ。
「払えなくなれば元妻の連帯保証に傷がつく」というプレッシャーも加わり、 精神的な縛りは離婚後も延々と続く。
リスク② 売っても「マイナス」が残るオーバーローン
問い:売れば全部解決できる?
答え:購入5年以内の離婚なら、売却代金よりローン残高が上回る可能性が高い。
ペアローンは借入総額が膨らみやすい。 購入直後は元本がほとんど減っておらず、売却価格が残債を下回るオーバーローンになりがちだ。
この状態では金融機関は抵当権を外してくれないため、 普通の売却はできない。残債を二人で割り勘して返し続けるか、 後述の任意売却に進むしかない。「売れば終わり」は幻想だ。
リスク③ 「一本化したい」は9割方、審査落ちで終わる
問い:離婚後に夫名義1本に統合できる?
答え:単独の返済能力が審査される。共働き前提で組んだローンを1人で通すのは険しい。
離婚を機に「どちらか一方の名義に借り換えたい」という要望は多い。 しかし金融機関は単独収入で全額返せるかを厳しく見る。 共働きを前提に4,000万円借りたなら、 一人で4,000万円分の審査を通すのはよほど収入が高くないと難しい。 勤続年数・年収・信用情報のどれか一つが引っかかれば即アウトだ。
4つの選択肢を比較する
| 対処法 | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 売却して清算 | 関係をきれいに切れる | オーバーローン時は残債が残る |
| どちらかが住み続け払い続ける | 子どもの転校不要など | 出た側に返済義務・保証が残る |
| 賃貸に出してローンを返す | 家賃収入で返済を補える | 金融機関の許可が必要・空室リスク |
| 一本化(借り換え) | すっきり整理できる | 審査が厳しく通らないことが多い |
動くなら「この順番」で動け
①残債と査定額を照合する まず不動産会社に査定を依頼し、オーバーローンかどうかを数字で把握する。 感情より先に「数字」を確認しないと、判断基準が揺れ続ける。
②金融機関に早めに相談する 名義変更・借り換え・任意売却の可否は金融機関ごとに異なる。 「離婚したので相談したい」と早期に連絡するほど選択肢が広がる。
③離婚協議書にローンの取り決めを明記する 「出た側が半分払う」という口約束は、3年後には「そんな話はしていない」になる。 公正証書にして初めて法的な強制力が生まれる。
結局、ペアローンは「選ぶべきか」
借入額を増やすためだけにペアローンを選ぶのは危険だ。 収入合算(連帯債務型)や単独ローンで借入額を抑える設計と比べ、 ペアローンは離婚時の「出口」が極端に少ない。
「もし別れたら?」を購入前に二人で話せるなら、それは良い夫婦だ。 その会話ができないまま4,000万円の契約書に判を押すのは、 賭けにしてはリターンが小さすぎる。
よくある質問
Q. 離婚後、家に住み続ける側だけがローンを払えばいいですか? A. 夫婦間の合意だけでは不十分です。金融機関との契約は変わらず、出た側にも支払い義務が残ります。口約束でなく金融機関を交えた正式手続きが必要です。
Q. ペアローンのまま離婚して、相手が払わなくなったらどうなりますか? A. 連帯保証人であるあなたに請求が来ます。住んでいない家のローンを全額負担するリスクがあり、滞納が続けば競売に発展することもあります。
Q. オーバーローンでも家を売れますか? A. 金融機関の同意を得た「任意売却」という方法があります。ただし信用情報への影響が出る場合があるため、早期に専門家へ相談してください。
Q. ペアローン以外で借入額を増やす方法はありますか? A. 収入合算(連帯債務型)があります。連帯債務型は主債務者が1人のため、離婚後の名義整理がペアローンより現実的なケースもあります。ただしこちらも一本化には審査が伴います。

